至らない尽くされない家

世間一般の常識とは別に自分自身の経験から得た価値観をもつ事は大変重要だと思っている。たまたま建設業を営むクライアントは自らの価値観を建築で示す事ができる。一般的な常識も正しいのかどうかは分からない。ただ自分が正しいと思った事をやってみる。間違えばそれこそが学びである。

まだ小さな子供を持つクライアントは海沿いの民宿を改装し、自然体験と共に自分自身で考える事のできる人間を育てようとしている。何もかも用意された環境では自ら学べない。至れり尽せりのリゾート的なものの対局にある「至らない尽くされない家」が良い。

海、山、雨や風、それらをダイレクトに感じることのできる海の家。この家に凝ったデザインもディテールもむしろ不要である。

ひとともりは、ただクライアントの考えを整理し壁打ち相手として関与させて頂いた。全てはクライアントの思想がカタチとなった。

設計施工: 嵩倉建設

壁打係: ひとともり

写真: 河田弘樹